Cinema English

MERITÉ翻訳事務所の映像翻訳者Millieによるブログ。英語、映画、翻訳生活など。

3点リーダの迷宮…

皆さま、こんにちは!翻訳者のMillieです。

 

さて先日、3点リーダ(...)について以下のようなツイートをしました。

 

個人的には、この「ネタバレ感」がずっと気になっていました。ツイートではホラーの例を挙げましたが、コメディでもよくありますよね。

 

例えば主人公の恋人が"Well you know..."(字幕は「ほら...」など)と言いながら、後ろ歩きで車道に足を踏み入れたらもう危険信号ですね。コレ、もう絶対に横から来た大型トラックにひかれるやつです。

 

では、どうすればいいのか?

今回は以下の3つの対処法を検証してみたいと思います。

***

言わんとしてたことを全部訳してしまえ戦法

ツイートでも紹介しましたが、先日ラジオを聞いていた時、映画関係者の方がこう話していました。

 

「3点リーダがあると、次の展開が視聴者にバレてしまう。だから映画業界では、こうした字幕は『作劇殺し』と呼ばれている」

 

なるほど、やはりそうなのか...と思っていると、続けてこうおっしゃっていました。

 

「3点リーダなんて使わず、言わんとしていたことを全て字幕にしてしまえばいい。そうすれば、それを読んでるうちに何かが起こる(例:幽霊が出る、トラックにひかれる)から、英語で見ている視聴者と同じ効果が得られるはず」

 

これは正直、場合によりけりかなと思います。

考慮すべき点は以下のような感じでしょうか。

 

・文章の長さ

例えば"You know, she said you were a bastar..."ぐらいまで言いかけてたら、3点リーダを使わずに最後まで言い切ってもよさそうですよね。

 

でも、たいていの場合、"what..." "you..." "by the way..."みたいな短い文章なので、その人物の「言わんとしてたこと」は製作者のみぞ知る状態。勝手に作れば、創作になってしまいます。

 

・視聴者への負担

さらに、短い尺に詰め込まれた長い文章を読ませるのは視聴者に負担をかけることになるよな~と思います。一生懸命字面を追っていて映像を見られなかったら、元も子もないですよね。

 

確かに読んでる間に画面上で何か起こったらビックリするとは思いますが、画をしっかり見てない視聴者は混乱してしまうかもしれません。

 

***

何とか言い切る戦法

上の戦法よりも、もう少しコンパクトにまとめるイメージです。

 

これも創作と呼ばれてしまうかもしれませんが、その後に来る「ビックリ効果」を失わせないことが重要なので、「そうか」「それで?」「ああ」「ええ」などなど相槌系の言葉で置き換えるのもアリかもしれません(もちろん申し送り必須)。

 

ケンカ中なら「何だと?」「この野郎」など。ホラーなら「今のは?」「ヤバい」「怖い」「何なの?」などなど。これも文脈によりますかね...

 

***

OUT戦法

字幕では、以下のようなセリフの訳出を省略することがあります。

・あまりに尺が短いセリフ("What?" "Really?"など)

・尺が短い+文脈上あまり重要でないセリフ

・ほかの話者と同時に話しているため、被ってしまっているセリフ(かつ、あまり文脈上重要でないもの)

 

これを「OUT(アウト)にする」といいます。

(エージェントによって言葉は違うかもしれませんが、ここでは便宜上この表現を使っていきます。)

 

登場人物のセリフが1~2単語など比較的短い場合は、OUTにするのもアリだと思います。後に続く「ビックリ効果」もいい感じに効いてくるのではないでしょうか。

 

反対に、①の例で挙げた"You know, she said you were a bastar..."などをOUTにすると視聴者が置いてけぼりになってしまうので、この手法は使えませんね。

 

***

 

以上、3点リーダの迷宮に対する自分なりの考えを書いてみましたが、さらなる...迷宮に...引き込まれ...そうです...。

 

映像翻訳では臨機応変さが求められるので、3点リーダに関しても「場合によりけり」で使い分けるしかないかもしれません。

 

もし何かいいアイデアがありましたら、ぜひご教示ください!

私も考え続けたいと思います。

 

ではでは皆さん、Happy translating ♪